「クマの子太郎」
2008/06/28 14:43
山地の開発や森林伐採が進んで、クマたちも住む場所を追われ、10年ほど前から、ハイキングの人と遭遇したり、餌を求めて人里に出現したなどのニュースを頻繁に聞くようになりました。
人間たちは自分たちの都合で木をどんどん切り倒して、
代わりに生育の早いスギやヒノキをたくさん植えていきます。
結果クマの餌となるクリやカシなど実のなる木が山には少なくなってしまいました。
奥深い山々が連なる和歌山県も例外ではなく、クマが餌を求めて山から山へと旅するそうです。
仕方なく人里に下りてゴミをあさってると射殺されたりするわけですよ。
撃たれたクマの胃の中は空っぽ。餓死寸前だったってことがよくあるそうです。
クマの子 太郎 (ノンフィクション絵本―いのちのゆりかごシリーズ) (1998/04) 今関 信子岡本 順 商品詳細を見る |
和歌山で鳥獣保護員をしている東山省三さんは、母親が射殺されてしまったたクマの子どもを育てます。
育てていくうちに
「クマのなわばりを人間が侵す権利はない!」
「これ以上クマたちが飢えて死んでいくのを見過ごすなんてできない。」
「クマが山奥でクマらしく暮らせるように俺ひとりでも実のなる木を植えてやろう。」
と山を借りてたった一人で太郎が好きなクリの苗木を植え始めます。
毎日山に登って、あせだくだくになって一人苗木の世話をします。
数年後全国から若者が手伝いに来るようになり、手紙がきたり、お金が送られてきたり・・。
東山さんは送られてきたお金で苗木を買うと、お金を送ってくれた人の名前を札を苗木にかけました。
地元の小学生も手伝ってくれるようになりました。
十数年前に生命を救うためにたった一人で行動を起こした東山さん。
一人でも始める勇気と労力をみんなが持っていれば、世の中はもっともっと良くなっていくのでしょうけど・・。
「自然環境とはたくさんの生命を包む大きなゆりかご」
とこのいのちのゆりかごシリーズの巻末に書かれていました。
人間だってその自然の中で生かされているのです。
私たちのゆりかごを心地いいものにしたいですよね。
作家別 あ行 | Comment(0) | Trackback(0) | Top ▲